大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

鳥取家庭裁判所 事件番号不詳 判決

本籍 島根県周吉郡西郷町大字中町四五四番地の七

住居 鳥取県東伯郡東郷町中興寺四○五番地の一

特殊下宿業 白川悦子こと 白川和子

大正十一年一月四日生

主文

被告人を罰金五千円に処する。

右罰金を完納することができぬときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

被告人は昭和二十八年二月頃から肩書住居において特殊下宿業を営んでいたものであるが同年八月末頃児童である河○春○(昭和十一年六月十日生)同勝○朝○(昭和十一年八月二日生)を同女等がいずれも満十八才未満の児童であることを精査せず不注意でこれを知らずに接客婦として右被告人方に住込ませて使用し

第一  同年九月一日頃から同年十月五日頃までの間東伯郡東郷町松崎谷水旅館等で右河○春○に遊客約十九名と淫行をさせ

第二  同年九月初旬頃から同月二十二日頃までの間同町松の家旅館等で右勝○朝○に遊客四名と淫行をさせたものである。

右事実は被告人の当公廷における供述及び被告人の検察官に対する昭和二十八年十二月五日附及び同月三十日附各供述調書の記載と

第一につき

(一)  河○春○の検察官に対する昭和二十八年十二月二日附供述調書の記載

(二)  谷水ツル子、山田善之助、田村きぬ、瀬戸修の司法警察員に対するそれぞれ供述調書の記載

(三)  領置した証第二号計算帳の記載

第二につき

(一)  勝○朝○の検察官に対する昭和二十八年十二月二日附供述調書の記載

(二)  田村きぬ、瀬戸修の司法警察員に対するそれぞれ供述調書の記載

を綜合して認める。

法律によると被告人の前記各所為はいずれも児童福祉法第三十四条第一項第六号第六十条第一項第三項にあたるから所定刑中罰金刑を選択し以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十八条第二項に従つて合算した罰金額の範囲内で被告人を罰金五千円に処し右罰金を完納することができぬときは同法第十八条により金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。

弁護人は児童に淫行をさせる行為とは児童を強制して淫行をなさしめる場合をいうのであるしかるに本件において被告人は前記河○春○及び勝○朝○に対し淫行をなすべきことを強制した事実は全然ない同人等は自己の自由意思に基いて淫行をしたに過ぎない従つて被告人は児童に淫行をさせたものということはできないと主張するからこの点につき当裁判所の見解を述べると、児童福祉法第三十四条第一項第六号に所謂児童に淫行をさせる行為とはひとり児童を直接又は間接に強制して淫行をなさしめる場合のみに限らず児童に対し利害得失を説明して淫行をするよう示唆暗示し或は淫行の場所を提供してその便益を図りその結果児童をして淫行をなすに至らしめた諸般の場合を広く包含するものと解すべきである。しかるところ前記被告人及び河○春○、勝○朝○の検察官に対するそれぞれ供述調書の記載を綜合すれば被告人はその経営する所謂置屋に児童である前記河○春○、同勝○朝○を接客婦として住込ませ同女等が売淫すればそれだけ收入が増加する仕組みのもとにおき、そして同女等に対し売淫に際しての遊客に接する態度方法並に姙娠又は病毒の感染を防止するため淫行後局部の洗滌をなすべきことまで指導して淫行をなすべきことを示唆暗示し同女等をして前記のとおり淫行をなすに至らしめたものであることを認めるに十分であるから被告人の右所為は児童福祉法第三十四条第一項第六号にいう児童に淫行をさせた場合にあたるといわなければならない従つて右弁護人の主張は理由がない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋文恵)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!